9日 ホワイトアウト 駒ノ小屋 9:10・・・小倉山 10:30・・・駒ノ湯 13:30
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| 鉱山道尾根 |
8日 駒ノ湯まで車で入れた事に安堵しながらも、これから目指す稜線に目をやればそこは新緑が眩しい藪尾根となっていた。
雪壁の下まで行ってどうするか決めようと駒ノ湯を後にする。すっきりしない空模様だが大崩れはしないだろう。
雪壁下の手前までAさんのサポートを受け、そこからは一人で向かう。
フキギの雪壁はやはり雪が少なく、潅木が多く出ていて楽そうに見えたが、前々日に降雪があり、木々に積もった新雪が緩んで落ちて、ちょっとした表層雪崩を起こしていた。
つかまるところはいっぱいあるから「取りあえず行ってみるか」。と、2004年時の登攀ルートをとる。
基部から5m程左へトラバースし、太い岳樺の木に取り付きそこから直上する。 前回ここで足がつったので、今回も同じ事になるのではないかとの不安から慎重に登る。
時々上からミニ雪崩が発生してくるので出来るだけブッシュ伝いに行く。
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| フキギの雪壁 |
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| フキギを振り返る(左にスキーの跡があるが・・・) |
ブッシュがあるとはいっても70度位の壁だから滑ったら止まらない。だましだまし登って行くが痙攣とおいらん下駄にはさすがに参った。クロアールの抜け口は雪が被さっており、これまた一苦労。そこからは傾斜が若干落ちるのだが深いシュルントが待ち構えていたりで終始気が抜けない。
14時、フキギの頂に立つ。しかしこの頃からあたりはガスに包まれ何も見えなくなる。天気がよければ白いオツルミズを挟んで正面に駒ヶ岳が迫っているのだが・・・。
時折薄れるガスの切れ間にルートを確認しオツルミズに下降する。沢は今シーズン小雪のせいか河岸段丘のように2段になっている。2004年より20mも少ない。
沢の中にスキーの跡があり、明らかに登った跡であった。沢の中は新雪でラッセルになるので、尾根からさがりクラストしているブッシュ帯との接線を行く。
小屋の鉄塔の先端が見えるあたりでようやくガスが晴れ、フキギが雲の中に浮かび上がった。
小屋には予定通りの到着だが、周囲は再びガスに包まれてきた。日曜なのでさすがに他に泊り客はおらず、小屋の中は暗く静まり返っていた。明るい入り口近くに居たかったが、狭苦しいので奥の明かりが差し込む場所に陣取る。
ひと息入れてから外に出て到着のメールを送り、雪を取ったりしてその後、締りの悪い戸だったので思い切り閉めたらなんか開かなくなって・・・。
その時はたいして気にもとめず、朝になったら直そうと早々に眠りに着く。小屋常備のマットと毛布のお陰で暖かい夜だった。
=雪女の誘い?を断って=
9日 開かない扉をどうしてくれようかと考えながら朝のラーメンをすする。ロックが45度に傾いたままどうしても動かない。小屋にあった工具でノブをばらして見ても開かない。結局最後の手段、ピッケルでこじって枠を壊して開けた。
外はガスで視界5m位。白沢の頭へは右に50m位下りて左に行けば間違いない。何十回も来ているところだガスられても不安は無い。しかし・・・・。
50mくらい下りて左に曲がったらトレースに合流した。昨日の登山者のトレースと思った。
トレースをたどって下山する。しかし、おかしい。見慣れた景色と違う。いくら雪が少ないといっても傾斜やガスの切れ切れに見える岩やブッシュの配置が白沢ノ頭に向かう感じと違う。
トレースに合流した所まで登り返す。左上から降りてきたので右に行ってみる。登りだ。おかしい、また下りてまた登る。その時一瞬ガスが切れて信じられない光景が・・・。
左後方下に見えたものそれは駒ノ小屋だった。その瞬間私は背筋に冷たいものを感じた。「小屋に戻される・・・」いくらガスって視界がないといったって小屋を出てすぐ右と左を間違える訳が無い。しかし現実には間違った。
オツルミズの水場の下流あたりをリングワンデリングし、駒の山頂に向かっていたのだ。合流したトレースは昨日自分が登って来た時のもの。何か得体のしれない力に引き寄せられた。そうとしか思われない。
そういえば昨日のスキー跡もなんか違和感があった。ここはよく山頂から滑ってきて登り返したりしているのだが、滑った跡が見られなかった。ただ、昔、私も手別尾根をスキーを担いで登り、オツルミズをシールで登ったことがあるので、登りだけでもありかと思っていたが、よくよく考えてみれば、今年はもう手別尾根はスキーを担いで登るには雪が少なすぎる。
昨日の自分のトレースを辿って再び小屋に戻る。こういう状況下では動かないでガスが薄くなるのを待って行動するのが安全登山の鉄則だが、気持ちは一刻も早くこの小屋から立ち去りたかった。念には念を入れ、地図と磁石で方向を確かめて再度下山。すぐに白沢の頭への尾根を見つける。白沢ノ頭を下りるとガスも薄くなり遠くまで視界が広がった。
こんなに広い尾根はここしかない。ルートは間違っていないのだが、自分自身が信じられなくなり、心の奥では大丈夫か大丈夫かと常に自分に問い掛けながら駒ノ湯を目指していた。