2008/10/12-13 大幽東ノ沢から丸山岳

  メンバー:O(記)、〇み

  10月12日 晴れ時々曇り
   大幽橋 6:45・・・ダム(入渓点) 7:30・・・窪ノ沢出合 10:10・・・ヨシノ沢二俣 12:00・・・丸山岳 16:30

  10月13日 晴れ
   丸山岳 7:30・・・ヨシノ沢二俣 10:30・・・窪ノ沢出合 12:10・・・ダム 15:00・・・大幽橋 15:40

穏やかなゴーロが続く
・・・目の前には群青色の空が広がっていた。体を包む丈の長い茎はまるで獣の毛のようで、夕日に染まり黄金色の輝きを放っていた。私はまるでその巨大な獣の背に寝転んでいるような感覚にとらわれて空を見上げていた。・・・

2005年から3年後、我々は再び南会津の奥に佇む丸山岳の山頂に立った。あの時はガスでほとんど視界がきかず、右往左往しながらメルガマタ沢に下ったが、今は柔らかな秋の日差しを浴びながらこの広大な景色の中の一部となっている。

美しく優しささえ感じるこの頂。しかし、それも束の間、秋の夕暮れは早い。急激に下がってくる気温を指先に感じながら急いで幕営準備に入る。

元々丸山岳は今年の予定にはなく、当初、御神楽沢から会津駒を予定していたのだが、時季的に水をかぶるのを避け、御神楽沢は次の機会に回し今回は東ノ沢を選んだ。

しかし、1泊2日では不安があった為、休みだった11日の午後から出掛け、登山口で車中泊することにした。

大幽橋の駐車スペースには既に1台の車が止まっていた。人影はなく、入渓したらしいが今日はかなりの大雨だった。

翌朝、高桑信一氏の本に触発されて来たと言う沢屋もどきのおじさんと、地元?のきのこ採りのおじさん3名が先に入っていった。
沢屋もどきのおじさんをダムの手前で追い越し、西ノ沢出合できのこ採りのおじさん達に追いついた。

唯一のゴルジュ(右に巻道がある)
そこでおじさん達から「この先にナメコの出ているところがあるから採っていけばいいよ」と優しい言葉をかけていただいたが、途中で追い越されさっさと自分たちで採って行ってしまった。後にはエノキの頭だけのようなのがちょっと残っているだけだった。

やはり春の山菜や秋のきのこは他人には譲れないらしい。おじさんたちの本性をかいまみた思いがした。

10月から禁漁期間に入り岩魚も釣ることができなくなり、きのこはちょっと期待していたのだけれど、その後きのこの知識がないこともあって、口に入りそうなものは何も採れなかった。

この東ノ沢は大きな滝もなく問題になるところは何もないが、一箇所だけ窪ノ沢手前に50mのゴルジュがある。暑い時季なら泳いで通過できるらしいが、迷わず前回同様左岸の巻き道を行く。
このゴルジュを通過しないと沢遡りとしての面白味はないかもしれない。

山頂が青々とした草原の時季に来ることが出来たら、是非通過してみたいところだ。

ヨシノ沢の二俣は前回のビバーグ地。ここまで来ると周囲の紅葉が一段と鮮やかになってきた。ここからは斜度が急に増し、小滝を越えながらぐんぐん高度をかせぐ。
しかし、1回来ているのにルートを間違った。おかしいと思いつつも沢をどんどん詰めて源頭を過ぎ、10m位竹薮を漕いだらイタドリの斜面に出、左奥に点在する草紅葉が見えた。

いずれにしても山頂は近いことを確信しそのまま急登をあがったら、そこはオオシラビソ林の台地で、一瞬別の世界に飛び込んだような錯覚にとらわれた。
とにかく高いところを目指せば間違いないと辺りを見回すと、左手の木々の間に草紅葉の頂が見え隠れしており、そちらに向かって薮漕ぎに入る。幸い薮は薄く30分の薮漕ぎで山頂手前のピークに出た。

山頂手前のピークから会津朝日岳を望む
奥が丸山岳山頂
山頂の池塘から
東ノ沢への降り口(奥の林の辺りを登った)
そこは、一面の草原に池塘が点在している広い頂で、同じように池塘と草原の広がる平ヶ岳とはなにか違った雰囲気があった。
それは多分、ここに至る登山道がないため、平ヶ岳とは比較ならないほど入山者が少なく、道も踏み跡程度で、こういう山には必ずといっていいほど敷設されている木道もないし、薮に入ると見失うほど踏み跡は薄く、つまり、人間臭さが少ないせいなのだろう。

こういう山はこのままにして、ずっと秘境であってほしいと思う。

ツエルトを張るには平らな草原が広がるここの方が良かったが、やはり山頂にこだわり、目の前の頂に向かう。

30分の登りで3年前にかなわなかった想いが胸いっぱいに広がった。

夜半過ぎ、風にバタつくフライの音で目を覚まし外に出てみる。
辺りは日中の穏やかさとは対照的に透明で張り詰めたような空気が漂っていた。

満月に近づき丸みを増してきた月は西の山なみに沈み、雲ひとつない深遠な天空に、にぎやかな冬の星座たちが宝石のような輝きを放っていた。


快晴の朝を迎えた。ゴアのツエルトは快適だったが、防水効果の衰えたフライは夜露で裏までびしょ濡れだった。

陽が高くなるにつれ、青空を映した池塘の水面は青空よりも青く輝き、草原の輝きと競い合っているかのようだった。

下山は間違えないようにと慎重に踏み跡を辿って下りようとしたが、一抹の不安があった。
今回、登りのルートを間違えた上に、前回は反対側のメルガマタ沢に下ったので、下山ルートの経験が無く、景色の記憶といえば、前回、ガスの中を登った時の記憶だけだった。

案の定、草原から沢に入るところで、踏跡から水路のように繋がった小沢に危うく間違って下りかけた。が、そこはなんとか正規ルートを見つけることができた。

東ノ沢への下り口の草原は、登りの時左手に点在して見えた草原だとわかり、地図上で250m位の距離だった。
登りの時、あそこからこちらににトラバースしていればオオシラビソの薮漕ぎはしないで済んだのだが「おかげで別のルートも発見できた」と自らを納得させる。

ヨシノ沢の二俣までは急な細沢を一気に下り、そこからは平凡な川原歩きとなる。
渓相を考えて今回はフェルトシューズを履いて来たが、山頂一帯の素晴しい雰囲気に比べ、単調な沢下りに緊張感も無く、何回かコケながら結局遡って来たのと同じ時間かかった。

下山後は、只見町の温泉センターに浸かってから、県境の六十里越に向かって車を走らせた。