2012/10/6~7 岩手 葛根田川 北ノ又沢~秋取沢下降

  メンバー:O(記)、〇み

「東北の沢に行きたい!」そんな〇みの言葉を聞いたのは、折しも岳人10月号を手に取っていた時。しかも表紙には思い出のあの風景写真が・・・。
「おーし葛根田に行くべー!」

思い起こせば2000年の夏、この名渓に向かったのだが、デポ地予定の滝ノ上温泉の近くまで行ったら、道路が工事中で通行止め。まだ車にはカーナビが付いておらず、道路地図を頼りに暗闇の中、やっと山の中の迂回路を右往左往しながら予定地に辿り着いたが、大幅にタイムロス。仕方なく本流はあきらめ、下降予定の秋取沢を登ったのだが、上で迷ってヘッドランプ下山。
「リベンジだぁー」

沢中1泊で帰って来るために5日の夜出て、出来るだけ現地近くのSAでの車中泊とし東北道をひた走るが、宮城に入ると3・11の震災復旧工事で渋滞気味、それでも12時過ぎまで頑張って紫波SAで車中泊とする。高速がまだこんな状態だから街道や住宅の復旧も遅れているんだろうなぁ。

 6日 曇り
  滝ノ上温泉駐車場   8:45
  地熱発電所先入渓点 9:25
  大石沢出合      11:15
  滝ノ又沢出合     13:10
  北ノ又沢出合     13:20
   ビバーグ地       14:40

盛岡ICで降り、滝ノ上温泉に向かう。地方に来たら食料は現地調達を旨としているが、通りっ端にはコンビニどころか店らしいところが全く見当たらない。
ようやく町外れの閑散とした道路の脇にスーパーらしき店が開いており、現地食を調達することができたが、とてもこちらのスーパーHとは大違い。賞味期限は大丈夫かしらん。

滝ノ上温泉の駐車場周辺は、あちこちから蒸気が噴出し、さながら地獄谷の様相。
入渓点までは地熱発電所の敷地内を歩くのだが、ゲートがあって基本的には入れない。しかし沢屋や釣屋は黙認してくれているようで、会っても何も言われない。(ありがとうございます)

舗装道路の終点から薮の林道を少し行き、薮の薄そうなところから川に降りたが、水量が少なければ舗装道路の終点付近から入った方が、薮漕ぎしないで済む。

入渓地点は広い河原だが、15分も歩くと美しい滑床が始まる。ほとんど高度を稼いでいる感じがしないが、河原と滑床が交互に現れ、左右からそれぞれ表情の違った滑滝が入り込み、お函と呼ばれるゴルジュや滝もいくつか越えるが全く問題なく、しかも飽きることなく距離を稼いで行く。

長い距離には音を上げる〇みも、9月末に米子沢を登ってトレーニングになったせいか、遅れずについて来て、順調に距離だけは稼ぎ、ビバーグ予定の滝ノ又沢出合、北ノ又沢出合も通り過ぎて行く。(もっとも2つの出合の間隔は地図でも200mほどで10分だった)

北ノ又沢に入るとすぐ行く手を20m位の滝に阻まれた。全体に濡れており、ホールドは細かく、夏ならシャワーを浴びてトライしたいところだが、今回は躊躇なく左の急な灌木帯から高巻く。50m位上がって、沢床に戻ると沢幅がかなり狭くなって来ており、そろそろ今宵のねぐらを探しながらの遡行となる。今日のねぐらの条件は1、水面より1m以上あること。2、出来れば砂地であること。3、流木が豊富なこと(気持ちはこれが一番)

そして出合から1kmちょっと入った辺りに、まさに条件にぴったりの場所があった。日はまだ高かったが、予定より奥に入れたので十分である。砂地をならしてイタドリやフキを敷きつめ、ツエルトを立てれば今夜のねぐら完成。目の前には豊富な流木。

2人して「いいちこ」のお湯割りを口に運びつつ、赤々と燃える焚火の炎を見つめながら、「岩魚が食いたいのぉー」

実は、高巻きしたあたりから魚影がやけに濃くなり、型の良い岩魚がかなり走っていた。下からの岩魚もあの滝は登れないが、釣屋さんや沢屋さんの多くは、ルートファインディングの容易な、北ノ又沢出合の二俣を左に入り、八瀬森山荘に向かうルートを取っているらしい。こちらは禁断のルートか・・・。どーりで踏跡が無かった訳だ。
10月からは禁漁期間に入った為、竿は持ってこなかったが、やはり岩魚の串が並ばない焚火は少し寂しい。

 7日 曇時々晴
  ビバーグ地       6:30
  登山道         9:10
  秋取沢下降点    10:00~10:20
  秋取沢        11:45
  葛根田川       14:10
  滝ノ上温泉駐車場 15:00

夜半に一時雨の予報だったが、降らずに、しかも曇りだったので放射冷却が起こらず暖かい夜だった。今朝も昨晩のオキをうちわで扇いで火を起こす。今日はこれからどんどん高度を増すが、このBPが950m位で稜線が1300m足らず。だから標高差は350m足らず。しかし、東北の渓はそう甘くない。

V字の滑床に滑滝が続く。昨日もそうだったが、見た目は滑り易そうな岩肌だが、意外とフリクションが効いて登り易い。今日は距離より高度を稼いで行く。ところが1000m付近の二俣で間違った。(迷ったのではない)

ここの右はゴーロ。左は顕著な6m滑滝。今回、あらかじめGPSにルート登録し、ナビゲーションできるようにしていたが、その登録ルートは右に行くよう設定していた。しかし、頭の中ではWeb情報などから、左の6m滑滝を登ってから尾根に出ずに、大白森に至るルートを描いていた。そのため迷わず6m滑滝を登りどんどん進んでしまった。
結果、途中で間違いに気付いたが、ともあれ登って行けば登山道に出ることはわかっていたので、慌てずもせず最後30分の薮漕ぎで登山道に出た。

現在位置がわかっていたにもかかわらず間違ったのは、頭の中に描いていたルートを、GPSの地図上に正確に反映できていなかったからである。

「秋取沢下降点のある大白森はどの辺かなぁ」と、登山道の草原で風に吹かれながら地図やルート図、GPSとにらめっこ。
大白森はこの登山道より下にあり、薮に邪魔されてここからは見る事が出来ない。
やっぱり最後は野生のカンを働かせて薮に突っ込むと、大白森が下に見え、グラウンドの様な広い草紅葉の草原が広がっていた。
周りの山々や沢筋を確認でき、下降点はすぐに分かり、最短ルートで降りる事が出来た。

下降点の草原でゆっくり休んで、いよいよ秋取沢への下降だ。薮の中の窪をどんどん下りて行くと、やがて水流が現れ沢の様相を呈してきた。こうなれば後は水流に沿って下りて行けば、登りと違って間違うことはない。

1時間ちょいで秋取沢の二俣のところに下りた。秋取沢も全体にナメが続く渓相で美しいが、かつての遡行記憶は全くない。

秋取沢の下降には、懸垂下降する滝がいくつかあることは事前調査で知っていた。しかし、ここでまた問題発生。最初の10m位の滝でブッシュに懸垂用の捨て縄がかかっており、「ここは懸垂だな」とザックに手を入れるが??無い??8mm30mのザイルが無い。もしかして天場に忘れて来たか、いやそんなことはない、それなら家に忘れて来たか・・。一瞬頭の中が真っ白。

しかし、そこは長年の経験で「こうなりゃあクライムダウンさぁ」と、よく見れば降りれそうなバンドが斜めに走っているではないか。〇みも一応クライマーの端くれ、2人して懸垂下降よりも早く下りてしまった。

最初から懸垂下降が頭にあると岩の状況など全く見ないものだ。こういうことは人生の中でもよくある事で、固定観念にとらわれてはいけない。とザイルを忘れてきた事を無理やりこじつけて自分を納得させる。

ザイルが無いとわかりその後の滝も全てクライムダウンで降りたが、特に難しい所はなかった。

秋取沢の出合近くには、林道が横切っており、この林道からも下山できるのだが、今は廃道となって薮がひどいらしく、このまま沢を下り、予定通り葛根田川の広い河原に戻って来た。

東北の沢は今までも何本か登って来ているが、越後の沢のように尾根と沢が顕著な所はあまりなかった。それゆえ登攀的要素は少ないが、ルートファインディング技術が必要不可欠となる。

家に帰って来て、デッキにザックの荷物を広げていたらザイルが出てきた。ザックと防水袋の間に入っていたのだ。
GPSのルート登録の間違いといい、ザイルの件といい、トシのせいか・・・。
また行ってみたい!!・・・が遠い。